本実験の経緯
水素添加によって不飽和脂肪酸の一部を飽和脂肪酸にする硬化油(部分硬化油)は、その製造過程で健康に悪影響があるとされるトランス脂肪酸が生成されることが判明しており、日本国内の加工油脂メーカーは段階的に硬化油の製造を中止する流れになってきております。
一方、不飽和脂肪酸に対し、限界まで水素添加を行った極度硬化油は不飽和脂肪酸であるトランス脂肪酸を含まないため、今後は硬化油から極度硬化油への移行が進んでいくことが想定されます。
そういった背景から当社への極度硬化油についての問い合わせは増加傾向にあります。
それに伴い「硬化油・極度硬化油とは何か?」ということを当社からも発信し、参考にしていただくを目的として極度硬化油の特性を実験し、動画にしました。
当社では大豆、菜種、ハイエルシン菜種、米、パーム、牛脂、豚脂の全7種類の極度硬化油を取り扱っておりますので、皆様のご参考になれば幸いです。
酸化・水素添加とは
油脂は炭素(C)同士が二重結合しており、この結合は他の物質と反応しやすいため、すぐ酸素(O)に割り込まれます。これが「酸化」です。
水素(H)を添加することで酸素(O)の入り込む余地を無くしてしまいます。これにより酸化安定性が得られます。
また、安定することにより硬くなるため、融点も高くなります。
硬化油の用途
硬化油の用途は、食品では、マーガリン、ショートニング等の原料として利用される他、ステアリン酸を多く含むため、工業的には石けんなどの原料としても利用されます。一般的に油脂は酸化しやすい性質がありますが、飽和脂肪酸は不飽和脂肪酸に比べて、酸化を受けにくいため変敗しにくく、保存性の高い油脂として有用です。
実験について
当社で取り扱いのある各種の極度硬化油(大豆、菜種、ハイエルシン菜種、米、パーム、牛脂、豚脂)について、それぞれの特性を実験し、その実験結果を動画で配信しております。
実験内容は下記3項目になります。
- 各極度硬化油の色目をみていただき、その割れと変形を検証(動画1)
- 各極度硬化油を硬化油に近づける様に制作したブレンド硬化油の割れと変形を検証(動画2)
ブレンド硬化油は融点などを従来の硬化油に近づける様制作したもので、分子構造レベルで硬化油と同等のものが出来上がる訳ではありません。 - ブレンド硬化油の燃焼実験(動画3)
硬化油破損テスト①
実験1はそれぞれの極度硬化油100%の割れと変形を検証する為、20gの固形にした試料に鉄球を落下させ、その割れ方、凹み方を撮影しました。
動画の始めに石油系ワックスの割れるパラフィンワックスと変形するマイクロクリスタンワックスで同条件の実験結果を撮影しておりますので、それを参考に動画をご覧ください。
硬化油破損テスト②
実験 2は実験1の極度硬化油100%の割れと変形の検証を踏まえ、極度硬化油とそれに対応する油脂(例えば大豆極度硬化油と大豆油)をそれぞれ混合比率を硬いものから柔らかいものへと変えて制作し、それぞれの割れと変形を同様に実験しました。
極度硬化油100%では硬すぎるという方のご参考になれば幸いです。
硬化油燃焼テスト
極度硬化油と油脂をブレンドして硬さや融点などを従来の硬化油に近づけた試料でキャンドルを制作し、燃え方やロウだまりの出来具合を観察しました。