石鹸作りには欠かせないけん化(鹸化)とけん化価(鹸化価)ですが、油脂の種類によってけん化価に違いがあります。
その違いと計算方法、また石鹸作りについてご紹介します。
けん化(鹸化)とは

油脂を水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)や水酸化カリウム(苛性カリ)などのアルカリで加水分解させ、石鹸(脂肪酸アルカリ塩)を得る方法です。同時にグリセリンも生成されます。
英語ではsaponification(サポニフィケーション)と言われ、sapoはラテン語で石鹸を意味する言葉です。
けん化価とは
けん化価(SV:Saponification Value)は、油脂を構成する脂肪酸の分子量と関係のある値で、油脂1gをけん化するために必要な水酸化カリウム、水酸化ナトリウムの量(mg)を計算する際に必要な値です。
けん化価と油脂の平均分子量は反比例の関係があり、けん化価が高いほど分子量は小さく、けん化価が低いほど分子量は大きくなります。
油脂をけん化させる際の計算式
石鹸作りによく使用されるヤシ油(けん化価:約256)を例にとってご紹介します。
水酸化カリウムでけん化させる場合
ヤシ油1gに対して256mg(けん化価)が必要
ヤシ油100gに対して25.6g(25600mg)の水酸化カリウムが必要
水酸化ナトリウムでけん化させる場合
ヤシ油1gに対して(けん化価×40÷56.1)(mg)が必要
(256×40÷56.1)≒182.5mgとなり、ヤシ油100gに対して18.3g(18250mg)の水酸化ナトリウムが必要
使用するアルカリによって液体もしくは固形石鹸になります。
水酸化カリウムでけん化…液体石鹸
水酸化ナトリウムでけん化…固形石鹸
100%けん化するより少し油分を残すことにより、肌に対してマイルドな使用感になります。
脂性肌の場合…95%
普通肌の場合…90%
主な石鹸材料のけん化価一覧
けん化価は、ヤシ油やパーム核油は250前後、植物油は190前後のものが多いです。
名称 | けん化価 |
---|---|
ヤシ油 | 256 |
パーム核油 | 244 |
パーム油 | 199 |
牛脂 | 196 |
豚脂 | 196 |
アボカドオイル | 190 |
アルガンオイル | 190 |
オリーブオイル | 190 |
米油 | 188 |
セサミオイル | 188 |
シアバター | 165 |
アーモンドオイル | 102 |
ホホバオイル | 95 |
蜜蝋 | 92 |
サンフラワーオイル | 85 |
コールドプロセス製法で作る固形石鹸の作り方
コールドプロセス製法とは
昔ながらの石鹸作りの手法で、オイルに熱を加えずゆっくりと時間をかけて熟成させる製法です。保湿成分のグリセリンを多く含んだ石鹸ができます。
準備するもの
- マスク
- ゴーグル
- エプロン
- ゴム手袋
- ラップ
- 型(牛乳パック・シリコン製の型など)
- 紙コップ
- 割りばし
- ステンレススプーン
- 攪拌棒
- ビーカー(ガラス製)
- ビーカー(ステンレス製)
- ゴムベラ
- 温度計
- 泡立て器
- ミキサー
- なべ(冷却用)
- 氷
- はかり
- IHヒーター
- 電子レンジ
- 保湿箱(発泡スチロール、ダンボールなど)
- 保湿シート(発砲シート、古いタオルなど)
- ビニール袋(アルカリゴミ用)
- 使い捨てカイロ(冬期の場合)
手順
- エプロン、ゴーグル、マスク、ゴム手袋をする
- 苛性ソーダを紙コップに、手早く分量どおり計量する
<素手で触らないように注意> - 精製水をビーカーで量り、少量ずつ苛性ソーダを加えて溶かす
- 氷水をはったボールもしくは鍋に③のビーカーを入れ、ゆっくりかき混ぜながら45°まで冷ます
- 冷ましている間に、オイルを計量する
- ⑤を温めて40~45℃にする
- ④が45℃まで冷めたら、⑥のオイルに少しずつ加え静かに混ぜる
- よく混ぜてからミキサーにいれて撹拌する
<目安:マヨネーズのような鈍く重たい音に変わるまで> - 精油を入れる場合は、この段階で適量を入れ1~2分撹拌する
<精油:使用するオイル全体の1%前後が一般的> - 型にゴムベラで流し込む
- 型を持ち上げてトントンと落とし、空気を抜く
- ラップをして保温シートに包み、発砲スチロール等の保温箱に入れ、約24時間保温する
<冬季:カイロ等で保温するのが良い> - 表面が固まったら保温箱から取り出し、風通しの良い場所で3日~1週間保管する
- 型と石鹸の間に隙間が出来たら、丁寧に石鹸を取り出す
- 石鹸の表面が固くなるまで2~3日自然乾燥する
- 全体を触り、ある程度の硬さになっていたら包丁で好みのサイズに切り分ける
- 3~4週間、日の当たらない風通しの良い所で乾燥させて完成させる
<手順13以降も、完全に乾くまでは強アルカリなので、ゴム手袋をして作業>
後始末
- 苛性ソーダのついた道具や生地を入れた道具などは、あらかじめ紙や布で拭き取ってから、酢で中和させ中性洗剤で洗ってください。
- 洗う時もゴム手袋をし、専用のスポンジを用意してください。
- 型に使用した牛乳パックなどの汚れ物はビニール袋に入れて燃えるゴミとして処分してください。
油の違いによる石鹸の出来上がりの特徴
使用する油によって泡立ちや溶けやすさなどが変わります。

しっとり・柔らかく溶けくずれやすい
ベースオイルとしてさらっとしていて使いやすい


石鹸のくずれを防ぐために欠かせない主要材料
起泡性に優れているため石鹸作りには欠かせない主要材料


肌に優しく、しっとりとした洗い上がり
石鹸の泡立ちをよくするために欠かせない主要材料


粘度の高い油で、しっとりとした洗い上がり
今回ご紹介したけん化価は一部であるため、以下の「石けん材料けん化価一覧表」も併せてご参照ください。
石鹸を作る際には是非参考にしていただければ幸いです。
山桂産業株式会社は1946年創業の油(オイル)と蝋(ワックス)の卸問屋です。
ECサイト「あぶら屋ヤマケイ」では多種多品目の油脂蝋を取り揃えてお待ちしております。