ワックス(蝋)にはさまざまな種類があり、硬さや融点などの物性も異なります。ワックスを選ぶ際、融点だけでなく、硬さも比較したいと考える方も多いのではないでしょうか。
ワックスの硬さを比較する指標のひとつに「針入度」があります。
本記事では、針入度の意味や数値の見方を解説するとともに、山桂産業で取り扱うワックスの針入度を比較し、それぞれの特徴や選定時のポイントをご紹介します。
ワックスの硬さは何で比較できる?
ワックス(蝋)を選ぶ際、融点や外観などを参考にすることがあります。しかし、ワックスの硬さを比較する場合、融点だけで判断することはできません。
融点は、ワックスが加熱によって溶ける温度に関する指標です。一方、硬さは、外部から力を加えたときにどの程度変形するかに関係する性質です。そのため、融点が高いワックスが、必ずしもほかのワックスより硬いとは限りません。
では、ワックスの硬さはどのように比較すればよいのでしょうか。その指標のひとつが「針入度」です。
針入度は、規定された条件のもとで針を試料に貫入させ、その深さを測定することで求められます。一般に、針入度の数値が小さいほど針が入りにくく、硬い傾向にあることを示します。
ただし、針入度は測定温度や試験方法などの条件によって値が変わるため、異なるワックスを比較する際には、測定条件も確認することが重要です。
針入度とは?
針入度とは、規定された条件で針を試料に貫入させ、その深さを測定することで、石油ワックスなどの硬さを評価する指標です。
石油ワックスの針入度試験方法は、JIS K 2235(石油ワックス)に規定されています。JISに基づく試験では、試料を加熱して容器に入れ、冷却した後、一定の温度に保ちます。その試料に、針などを含めた合計100gの荷重をかけ、5秒間で針が進入した深さを測定します。測定した深さを0.1mm単位で読み取り、その数値を10倍した値が針入度です。
例えば、針が5.0mm進入した場合、針入度は50となります。
一般的に、針入度の数値が小さいほど硬く、大きいほど柔らかい傾向を示します。
ただし、針入度は測定温度や試験方法などの条件によって値が変わります。異なるワックスを比較する際は、数値だけでなく、測定条件も確認することが重要です。
ワックスの針入度・硬さ比較
弊社で取り扱うワックスのうち、針入度のデータを確認できた製品を一覧にまとめました。測定条件を確認したうえで、比較可能な製品については針入度の数値が小さい順(硬い傾向の順)に掲載しています。
針入度は、一般的に数値が小さいほど硬い傾向を示します。製品を比較する際は、針入度だけでなく、測定温度や融点などもあわせてご確認ください。
| 商品名 | 針入度(25℃) | 融点 | 原料由来 |
|---|---|---|---|
| カルナバロウ | <1 | 80~86 | 植物 |
| キャンデリラワックス | 1 | 68~72 | 植物 |
| イボタ蝋 | 2.6 | 80~84 | 動物 |
| ライスワックス | 5 | 78~83 | 植物 |
| Hi-Mic-1090 | 6 | 88 | 石油 |
| Hi-Mic-2095 | 8 | 101 | 石油 |
| パルバックス | 10 | 64(軟化点) | 石油 |
| パラフィンワックス140℉ | 10 | 61 | 石油 |
| FT-0070(FTワックス) | 11 | 72 | 石油 |
| パラフィンワックス135℉ | 11 | 5969 | 石油 |
| Hi-Mic-1080 | 12 | 84 | 石油 |
| パラフィンワックス155℉ | 12 | 69 | 石油 |
| パラフィンワックス150℉ | 12 | 66 | 石油 |
| パラフィンワックス145℉ | 12 | 63 | 石油 |
| パラフィンワックス130℉ | 13 | 56 | 石油 |
| パラフィンワックス125℉ | 15 | 53 | 石油 |
| 蜜蝋 | 16 | 62.8 | 動物 |
| Hi-Mic-1070 | 20 | 80 | 石油 |
| パラフィンワックス120℉ | 22 | 50 | 石油 |
| Hi-Mic-2045 | 23 | 64 | 石油 |
| MULTI WAX W-445 | 25-35 | 76.7~82.2 | 石油 |
| パラフィンワックス115℉ | 29 | 48 | 石油 |
| 白蝋(ハゼ蝋) | 30 | 52.4 | 植物 |
| Hi-Mic-1045 | 37 | 72 | 石油 |
石油由来のワックスの針入度は、JIS K 2235に規定された試験方法に基づく数値です。一方、動物・植物由来のワックスについては、測定温度を25℃としていますが、その他の測定条件が異なる場合があります。そのため、数値を比較する際は、測定条件の違いにご留意ください。
針入度と融点はどう違う?
融点と針入度は、どちらもワックスの物性を把握するための指標ですが、示す性質は異なります。
融点は溶融する温度に関する指標であり、針入度は規定された条件で針が試料に貫入する深さから、硬さの傾向を評価する指標です。
そのため、融点が高いワックスが必ずしも硬いとは限りません。また、針入度だけで耐熱性や使用時の性能を判断することもできません。
ワックスを選ぶ際は、針入度と融点をあわせて確認し、使用する温度や用途に適した物性を備えているかを検討しましょう。
| 比較項目 | 融点 | 針入度 |
|---|---|---|
| 何を示すか | 溶融する温度に関する性質 | 規定条件での針の貫入の程度 |
| 数値から分かること | 溶ける温度の目安 | 硬さの傾向 |
| 数値を見る際の注意点 | 測定方法や融解範囲など | 温度・荷重・時間・試験方法など |
| ワックス選びでの 活用 | 使用温度や加熱条件の検討 | 硬さを比較する際の参考 |
用途に応じたワックスの選び方
ワックスは、キャンドルや化粧品、木工用塗料、工業製品など、さまざまな用途に使用されています。
用途によって求められる硬さや性質は異なるため、針入度だけでなく、融点や柔軟性、仕上がりなども考慮して選ぶことが大切です。
ここでは、用途ごとにワックスを選ぶ際のポイントをご紹介します。
キャンドル材料として使用する場合
キャンドルに使用するワックスは、容器に入れて固めるタイプ(グラスキャンドル)や、型に流し込んで成形するタイプ(モールドキャンドル、ピラーキャンドル)など、製品の形状や製法によって求められる性質が異なります。
例えば、成形したキャンドルの形状を保ちたい場合は、硬さや形状保持性が重要な検討項目となります。一方、容器に入れて使用するキャンドルでは、硬さだけでなく、溶け方や容器との相性なども考慮する必要があります。
針入度は硬さを比較する際の参考になりますが、キャンドルの仕上がりや燃焼性能を判断するには、ほかの指標や実際の使用条件も確認しましょう。
化粧品原料として使用する場合
化粧品原料として配合するワックスは、製品の硬さや使用感、塗り広げやすさなどに関係します。
例えば、スティック状の製品では形状を保つための硬さが求められる一方、指で取り、肌に塗り広げるバームでは、容器内での適度な硬さと使用時の肌での伸びのバランスが重要です。
ただし、最終製品の硬さや使用感は、ワックス単体の性質だけでなく、配合する油脂などの原料や配合割合によっても変わります。針入度は原料選定の参考とし、製品全体の処方を考慮して検討することが大切です。
木工・家具の仕上げに使用する場合
木工や家具の仕上げに使用するワックスでは、表面の保護やつや、塗り広げやすさ、仕上がりなどが選定のポイントになります。
硬さは、塗布時の扱いやすさや仕上がりに関係する場合がありますが、硬いワックスが必ずしも適しているとは限りません。木材の種類や仕上げの目的に応じて、ほかの原料との組み合わせや、塗布後の状態も確認する必要があります。
工業用途で使用する場合
工業用途では、製品の製造工程や使用環境に応じて、ワックスに求められる物性が異なります。硬さに加え、融点、粘度、耐熱性、他の原料との相溶性など、用途に関連する項目を確認することが重要です。
例えば、硬さを調整したい場合でも、針入度の数値だけで判断するのではなく、使用温度や配合する材料との組み合わせを考慮する必要があります。求める性能や製造条件を整理したうえで、適したワックスを選定しましょう。
このように、ワックスに求められる硬さやその他の性質は、用途によって異なります。針入度は硬さを比較するための参考指標ですが、それだけで用途への適性が決まるわけではありません。
ワックスを選ぶ際は、針入度と融点をはじめ、柔軟性や仕上がり、使用環境なども含めて総合的に検討することが大切です。
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